けもの道


道はいつも、後を歩く人々の為に踏み広げられるけれど。

無数の足跡に目を落とせば、小さな花の咲く余韻さえ見つからない。


道を外れて草を踏み分け、花の咲く優しい道を作ろうか。

そこに咲いている花を、踏みつけてしまうだろうけれど。


そうして作った優しい道で、後を歩く人々は、道端の小さな花に微笑んでくれるだろうか。

そうして作ろうとした道は、花の咲かない大きな道になってしまうだろうか。

それとも、そんなにも細い道を歩く人など、誰もいないのだろうか。


それならば、この足跡を草や木やあの小さな花が、やがて消してゆくだろう。

きっとそれは、青々とさわやかな香をふりまいて。


大きな道、優しい道、消えゆく道。

その道の行く末を、遠く通り過ぎる私には見られないけれど。


―さあ、いつ、この道を外れようか。

Fin.

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解説

「道」には、不思議な魅力を感じます。
よく知った道でも、見知らぬ土地の道でも、けもの道でも。

まぁ、けもの道に騙されて、集団で苦笑しながら戻ってくる光景なんて、
ちょっとした山では、よく見かけるワケで(笑)

行き止まりになっていて迷う危険が無いから、誰も注意書き立てないんだろうなぁ。
だんだん細くなっていく道は、何だか悪戯のようで、ちょっと楽しいですし。

普通の「道」でも、分野の「道」でも、
最初に踏み分ける人がいるんですよね。

ちなみに、背景イラストの文章も詩にちなんで。
「So,where am I going?」=「さあ、わたしは何処へ?」

2003年11月