遺信


空は今日も綺麗に晴れて、世界はこんなにも美しい。

この世界のどこにも、もういないのに。

風は柔らかく、緑の中に子供の声が踊る。

いない世界は、もっと悲しい色をしていると思った。


たったひとり消えたところで、世界は変わらず回り続ける。

優しい記憶に埋もれて、このままひとり立ち止まってしまおうか?

律儀に刻み続ける時計の針を、ひたりとこの指で止めて。


けれど、不思議だね。


空っぽだと思っていたのに、笑えていた。

乗り越えようなんて思わなくても、一日は終わっていく。


傷跡を抱えたまま、歩いていくよ。

消えない寂しさは、存在した証だから。


ありがとう。

会えて、幸せでした。

Fin.

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解説

蛇足になる事みえみえなので、あまり語らずに。

今日は、大切な人の命日です。
随分時間が経つのに、いまだに引きずっています。やれやれ。
多分ソレは、彼にとっては本望じゃないだろうなぁ。

いっそ言葉にしてしまえば、気持ちも成仏できるかなぁと思いました。
ちょっと割り切れた感じがします。

死ぬまで抱えていても、きっと構わないよね。
いつかは私もろとも消えるのだし。

2004年7月9日