◆ゆきやどり◆

    幻水2/坊→ラスカ・2主→クウ
    軍名ナナミ軍・城名ナナミ城


    雪。赤月帝国―現トラン共和国では滅多に見なかった、雪。
    空から降る白い冷たい物も、身を切るような寒さも物珍しい。

    ナナミ城の敷地内だからと、薄着でフラフラ歩いていたら、すぐに捕まった。
    グレミオとはまた違った意味での心配性、青雷のフリック。

    「寒くないか?」
    「うん…まぁ、それなりには」
    「また中途半端な返事を…寒いんなら、中に戻るぞ」
    「わーすごーくあったかいなーフリックのマントー」
    「………お前なぁ」

    城内に連れ戻されて、宛がわれた客室の前で別れて、その足でナナミ城屋上へ。
    運は悪いクセに勘はいいフリックに、五分と経たずに発見・捕獲された。

    この天然ストーカーめ。

    中に戻る気のないぼくに、フリックは自分のマントをよこそうとした。
    「きみも寒いだろう」と苦笑したら、後ろからすっぽりと抱きしめられた。
    ひとつ屋根の下ならぬ、一枚マントの中?

    もしぼくが苦笑しなければ、彼はひとりで城内に戻っただろうか。

    「雪が見たかったんだ」
    「室内でも見られるだろうが。せめて、もう少し防寒具を―」
    「寒いの、気持ちいいし」
    「カゼひくだろ」
    「だから、きみがいるんだろう?」

    殺し文句、ついでに必殺(元)天魁星スマイル。
    ぽんっ、と青雷が赤くなった。

    「あー…そりゃ、まぁ…。でも…」
    「青雷って自称?他称?」
    「自分で名乗り始めた覚えはないが…っていうか、嫌だろ、自称だったら」
    「笑い話にはなるんじゃない?」
    「やめてくれ…」

    ぼくを緩く抱きしめるフリックの腕は、3年前と変わらない。
    ちょっとは落ち着いたけれど、外見も中身も、それほどは変わりない。

    シーナやルックやカスミさん、フッチにメグ。同年代の人たちの隣に立つよりは、
    己の時が止まっているという実感が薄くて…ほんの少しだけ、安心する。

    3年。今はまだ、3年だから。
    10年、20年…300年。

    「…どうした?」
    「いや…何でもないよ。最近はどう?」
    「どうって…普通…かな。珍しいな、お前がオレの状態聞くなんて…」
    「じゃなくて、国の情勢。―いや、きみの状態がどうでもいいとか興味ないとかじゃなくて」
    「フォローになってないし…」
    「きみの事は、会えばすぐに分かるよ」

    単純だから…という理由は飲み込んで、また赤くなったフリックに笑いかける。

    「ニナちゃんの事とか…」

    あ、青くなった。

    「お、お前、誰に何を聞いた…!?」
    「ええと…クウとか、シーナとか、ルックとか…。ファンと燃え上がるか!?愛の炎!!」
    「…ちょっと待て、分かってるとは思うが…」
    「ニナちゃん、素敵な子じゃないか。十や二十の歳の差なんて、気にするな。ぼくは応援するぞ」

    おー真っ青。

    「………勘弁してくれ…今はそれどころじゃない」
    「戦争中だから?」
    「…お前が、側にいるから」

    …不覚。ふいうちだ。

    「…って言ったら、お前、帰るとか言い出すか?」

    …セーフ。
    赤くなった顔が冷めていくのを感じて、内心で安心する。

    「そうだな…雪が止んだら、帰ろうかな」
    「そうか…」

    残念そうな声。青いところは変わらない。…やっぱり、安心する。

    「ちょうど暇だったら、送ってくれるかな?国境までの山道、虎出るし」
    「ああ、いくらでも。…でも、まだ降ってるな」
    「うん、降ってるね」
    「…やっぱり、中に入らないか?」
    「外が見えない所?」
    「ああ」

    …不覚。自爆だ。


    Fin.

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    外が見えない→雪が止んでも気付かない→帰らせない…という。
    甘ー。

    うちの基本フリックさんはヘタレなんで、甘々か片思いしか描けないです(笑)
    やー格好よくて時々強引なフリックさんも素敵だなーとは思うけれど…
    そんなんサラサラ描ける気がしない…(=_=;

    2005年3月