◆stew大作戦/前編◆
幻水2/坊→ラスカ・2主→クウ
軍名ナナミ軍・城名ナナミ城
「あまりにも目に余る…この辺で一度、お灸を据えるべきだろう」
びっしりと文字の刻まれた報告書をテーブルに叩きつけ、シュウが眉を寄せた。
ナナミ軍の居城・ナナミ城の会議室は、熱く燃えていた。
…一部に限った話だが。
「落とし穴、落書き、目安箱に自宅宛の手紙を大量投入、屋上からバンジージャンプ、ノック&ダッシュ…」
ノック&ダッシュ―扉をノックし、すぐさまダッシュで逃げる。
子供のロマンが生み出した、迷惑な伝説の悪戯奥義だ。
「あいつのノック&ダッシュの餌食になっているのは、お前さんだけだろ…」
燃えるシュウに冷水を浴びせるように、つまらなそうに聞いていたビクトールが口を挟んだ。
「そして!我が軍のリーダーをかどわかし、遊び呆けさせている!ただでさえ作業が遅いというのに…」
「そのリーダーの方が連れ回してるって話だが」
「最近のリーダーの職務怠慢っぷりは尋常ではない。急ぎ手を打たねば、軍の士気に関わる」
「トラン援軍の士気に釣られて、ナナミ軍の士気も上昇しているようだぞ」
「そこでッ!」
ビクトールの突っ込みを全て流し、シュウは立ち上がった。
「全ての元凶とも言えるかの人物を捕獲し、早急に自宅へ送り返す!」
「シュウ兄さん、気持ちは分かるけど…相手が悪いわ」
息を荒げるシュウに、アップルが水を差し出した。
相手は今や、某共和国のヒーローと化している。それどころか、このナナミ軍でも、非公認ながらも、
軍主を筆頭とする愛好家集団―いわゆるファンクラブまで結成されている。
それだけですでに、ファンの報復という恐怖が付き纏うというのに、当の本人がこれまたベラボーに強い。
軽装のクセに高い防御力、ナナミ軍主を超える攻撃力、ついでに魔力まで高い上に、操る魔法は超強力…
もはや、嫌がらせとしか思えない。
何より恐ろしいのは、全てを清流の如く流してしまう、天然無敵スマイル…ある意味濁流だ。
しかし、シュウは不敵に笑った。
「ふ…この私が何の策もなしに、戦を提案すると思うか?」
ビクトールの「戦ぁ?」という当然の疑問を綺麗サッパリ無視し、シュウが一枚の紙をテーブルに置いた。
”特製シチュー”レシピ…。
「相手は、ものっそいシチューマニア…これ以上の策はあるまい…!」
「ものっそい美味いシチュー食わせて、帰ってくれって頼むのか?」
シュウの言葉を真似て、やる気なさげにビクトールが尋ねた。
戦乱のさなか、なんとものん気な話ではある。
「そんな真似をして、居付かれたらどうする。その逆だ」
どこからともなく、採れたて新鮮野菜・シチューセットを取り出し、シュウは会議室の面々を見回した。
「二度とこちらに来る気にならんような想像を絶するデンジャラスなシチューを作成・提供し、
自宅の美味シチューを恋しくさせる。名付けて『郷愁・ふるさとの味作戦』ッ!!」
「…ヘヴォ…」
誰ともつかぬ突っ込みは、空しく会議室の無駄に熱い空気に溶けた。
こんな内容で、続きモノです…(>△<;←なんてチャレンジャーな…
2004年6月