◆stew大作戦/中編◆
幻水2/坊→ラスカ・2主→クウ
軍名ナナミ軍・城名ナナミ城
「ラースーカーさんっ、お昼です、レストラン行きましょー!」
宛がわれた客室で読書に勤しんでいたラスカに、ノックとドアオープンをほぼ同時に行う離れ技をもって、
ナナミ軍主クウが元気に笑った。
顔を上げ、外に目をやったラスカが首を傾げる。
「少し、早くないかな…」
「昼真っ盛りはレストラン混みますし。それに、早めに来ないと、ラスカさん他の誰かと行っちゃうでしょう?
だから、仕事途中でバックレて…あ、いや」
「仕事、終わらせてからおいで。他の人に誘われても、断って待ってるから」
「…本当ですか?青雷や熊やルックやフッチやカスミさんやナナミが来ても?」
「うん」
「…ムクムクたちでも?」
「うーん、ムササビの誘いは断れないな…」
「断ってくださいっ。…やっぱり、昼食終わってから仕事します。行きましょー!」
「その誘い、待ったあぁッ!!」
ズバァンとありえない音をたてて、扉が吹っ飛んだ。
取り残されたドアノブを手に、ナナミ軍軍師・シュウがニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。
「マクドール殿、実は我が軍の軍主…すなわち、そこにいるクウが、昨夜夜なべして作り上げた特製シチューが
あるのですが」
「は?そんなん作った覚えな…ぐもッ!!」
シュウの右手があまりの高速に一瞬掻き消え、次の瞬間には、ドアノブがクウの口にキレイに嵌っていた。
今度はいつになく優しい笑みを浮かべ、シュウがハチリと指を鳴らす。
とたんに、どこからともなく覆面の男が現れ、クウの両腕をがっしりと掴んだ。くすんだ山吹色の服に、皮の胸当て。
ついでにもう一人の覆面が、ラスカを抱え上げた。青マントが揺れている。
「…フリック?」
ラスカの声に、ぎくりと青マントが体を強張らせた。
目的ブツをひっとらえた覆面たちを見回し、シュウは満足そうに頷く。
「ふと時計を見れば、おや昼時。というワケで、レストランへ参りましょう」
キャラ変わってない?という当然のツッコミも軽やかに無視し、シュウは先立って歩き始めた…。
レストランの厨房は、その日、なんともイヤ〜な臭いに包まれていた。
素材は良かったのだ、それこそ最高と言えるくらいに。
「それが…何でこうなるのよーー。食材が泣くよーーー」
凄まじい色と臭いを併せ持った液体を湛えるナベを前に、ハイ・ヨーはこの日何度目かの溜め息を漏らした。
思い出すだに恐ろしい…軍師シュウの料理は凄まじかった。
具はほぼ丸ごと、真水のナベにいきなり投げ込む。
そこからすでに直視できなくなったハイ・ヨーは、レストランの隅の椅子で、耳と目を塞いで待っていた。
10分後、「できたー!」とシュウがどこぞのアイドル集団のバラエティ番組の料理コーナーのような声を
上げた頃、レストランの中を、ごく短時間の煮込みで何故?というほどの、不思議な匂い…もとい臭いが充満して
いたのだった。
料理人として、未知なる味に興味はある。だが、全身が危険信号を発している。
なにせ、シュウは肉すら炒めていなかった。
興味と本能の狭間で揺れて、ハイ・ヨーは厨房をうろうろと行き来していた。
「うわ…なんです、この不思議な悪臭は?」
「あっ、シチューの人。よく来たヨーー!」
長い金髪に草色のマントを揺らし、手で鼻と口を覆って厨房に入ってきたのは、ナナミ軍外の者ながら、
ハイ・ヨーも見知った人物だった。
すみません、まだ続きます…。次で終わります(>△<;
2004年6月