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| Missing child Scene1 |
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「…どうしよう」 小さくつぶやいて、ボクはビルと電線に切り取られた、ごく狭い空を見上げた。 |
事の起こりは無限城下層、西の一画。監視カメラがひとつ、作動しなくなった。
まず、見回りがてらカメラの様子を見に行った笑師が、問題の区域手前のカメラに姿を映した後、消息を断った。
でも、携帯電話で連絡を試みると、カレはあっさり出た。
「迷子になりましたー。あかんわ、ココがドコだか全っっ然分からへん。
まぁ、何とか帰るんで、あんまり心配せぇへんといてなv」
緊張感の無い声に、ボクはちょっと安心したけれど…結局、翌日になっても笑師は戻らなかった。
仕方なく捜しに行った十兵衛までもが迷いかけて、ボク達はようやく異変に気が付いた。
丸一日かかって、それでも何とか帰り着いた十兵衛は、とりあえず元気そうに首を傾げてこう言った。
「見慣れない通路があった。その先も、見慣れない道が続いていた。
途中で引き返したが、兎に角ひどく入り組んだ道で―歩き回っているうちに、気が付いたら見慣れた道に戻っていた」
見慣れない―十兵衛の言う事だから、目に映る景色ではなく、雰囲気での事だろうけれど。
その一画は、どういうワケか、ボクのPCでも地形を把握出来なくなっていた。無論、その中に居る生命の数も。
相変わらず笑師は戻らない。
半日に一度、生存を知らせる為のコールがボクの携帯に入ってくるけれど、電池が切れるのも時間の問題だ。
そして、散歩がてら少し様子を見てみようと、問題の区域に足を踏み入れたボク自身も…迷子初体験。
「…どうしよう」
きちんと道を把握しながら進んできたにもかかわらず、引き返すと、目の前には見覚えの無い行き止まり。
立ち塞がる灰色のコンクリートを見上げて、ボクは小さく溜め息を零した。
「完全に迷ったな…。まさか、VOLTSメンバーがココで迷うなんて…銀次さんじゃあるまいし」
迷いかけた十兵衛と、現在進行形で迷っている笑師にはあえて触れずに、ボクは周囲を見回した。
どこにでもある狭い路地裏の風景に、特に異変は見えない。
でも、何かが不自然だ。人も動物もいない事と、建物に入る扉が一つも見当たらない事以上に―何かが。
ふと振り返ると、さっきまでコンクリートが立ちはだかっていたソコに、前方と同じような無機質な道。
ごく短い時間で、建物の配置と道が書き換えられている―そんな感じ。
カメラが作動しなくなった事と、何か関係があるのかな。電磁波の量と主な発生源が掴めれば…
…って、そんな場合じゃない。何とかして帰らないと。
「ノートパソコン、持ってきてよかった…。大まかな現在地くらいは分かるかな」
カチリ、とスイッチを入れ――あれ?
ONになってる。でも、モニターは真っ黒なまま。バッテリー切れ?そんな、まさか。
今朝、充電の為に電源に繋いで、持って出たのは昼過ぎ。とっくに充電は済んでるハズだ。
この間メンテしたばかりだし、故障はありえない。
…そういえば、十兵衛が何かいじっていたような…。
火事の原因はコンセントに繋ぎっ放しのソケットがどうとか、爽やかに言っ…
十兵衛…ッ!!Σ(@□@)
…原因が判明したところで、状況は何も変わらない。どうしよう。本ッッ当に本気で完全に迷子だ。
そのうち誰かが気付いて捜しに来てくれるかもしれないけれど…場所が場所だけに、二次遭難の危険が…あはは(汗)
そうだ、携帯…
『朔羅。笑師から連絡入るかもしれないから、携帯置いていくね』
しまった…ッ…!Σ(@□@;