| 着信アリ 秋元康 角川ホラー文庫/ホラー・同名映画の小説 |
自分の携帯番号からかけられて来る電話は、自分の死に際の声が聞こえる―
携帯電話という身近な物を介して襲い来る、理不尽な死の恐怖。
展開に残念な点もあるし、読後の後味も良くはないですが…文章は非常に簡単でした。 |
| ツイン・ピークス ローラの日記 J・リンチ 扶桑社/ミステリー・日記形式 |
遺体で発見された少女。彼女の薬と性に塗れた日記に秘められた秘密とは?
同名ドラマの開始時に繋がる前編的な小説だとかで、単独で読むには非常に不親切。
推理や犯人を無視して読んだんですが、そうなると妙な官能的な恐怖小説に…(笑 |
| 夢幻都市 田中芳樹 講談社文庫/ホラー・サスペンス |
北海道の原始林の中に建てられた人工都市。摩天楼を襲撃するは、絶滅した筈の狼―。
普通の父娘を不条理に襲う恐怖と謎。ホラー・サスペンス+SFといった雰囲気でした。
筆者独特の世を斜に見たような文は健在で、やや読み難い感は否めないかも…。 |
| アザーズ A・アメナーバル 角川文庫/ゴシックホラー・同名映画の小説版 |
戦後、幼子と3人で夫の帰りを待つ妻。使用人を雇った途端、屋敷を怪奇現象が襲う…
霧に包まれたどこか物淋しい屋敷を舞台に、易しい文で描かれる、親子の愛と悲哀。
幽霊物は数多くありますが、これは驚きの結末でした。映画も小説もいい感じ。 |
| 三国志 北方謙三 角川春樹事務所/時代小説・全13巻 |
後漢末、悪政に荒れる中国。乱世の終焉を志す群雄割拠の時代、全土を統一するのは―。
様々な英雄の視点から見る世界、変化と感情と凄まじい熱を感じる、壮大な物語。
難解なイメージの三国志ですが、これは登場人物の心情が中心で読み易かったです。 |
| ふたりの証拠 アゴタ・クリストフ 早川書房/歴史小説・三部作の二作目 |
終戦。真実と願望、愛と絶望―国境を越えた双子の兄弟の為、"リュカ"は手記を綴る。
悪童日記の続編、前作の直後から描かれる、三人称の長編作。
戦時を生き延びる為に培った心は、愛を求めながらも酷く不器用で、物悲しかったです。 |
| 悪童日記 アゴタ・クリストフ 早川書房/歴史小説・三部作の一作目 |
祖母の元へ疎開した双子の「ぼくら」が鮮明に記す、戦争が落とした、影の世界。
「ぼくら」の視点で描かれる、戦時中の過酷で歪んだ、けれど生命力に満ちた世界。
作文調の数十の掌編で描かれた生々しい文章、なぜか目が離せませんでした。 |
| あやし 宮部みゆき 角川文庫/奇談小説集 |
居眠りの夢に出た心中、自分にしか見えない女の首の絵、灰神楽が魅せるもの…。
江戸を舞台に描かれる、奇怪で恐ろしく、どこか切ない小編。
作中風景の印象深さ、そして人の心の描写、つい何度も読んでしまいます。 |
| 蝿の王 ゴールディング 新潮文庫/長編小説 |
無人島に堕ちた飛行機。大人のいない世界、心の闇は少年達を蝕み、秩序を食んでいく。
人の心の奥底に潜む闇を覗き込むかのような、重い話。
映画「ザ・ビーチ」の根源を思わせる、楽園に広がる狂気と混沌に震えました。 |
| 暗夜行路 志賀直哉 新潮文庫/長編小説 |
己が出生と運命に苦悩しながらも、強い意志で、謙作は幸福を捉えようと歩む。
数々の出会いや恋や変化…暗中模索の中で描かれる、弱く強い人の心。
切り出した石のような、力強い文章で描かれた繊細な物語が響きました。 |
| オーロラを見たよ 坂田おさむ 河出書房新社/エッセイ |
「おかあさんといっしょ」で歌のお兄さんを勤めた、"おさむお兄さん"のエッセイ。
歌のお兄さん時代の話に加え、幼少時代・昭和30年頃の話も。
子供時代独特の、薄れつつも部分的に色濃く残る記憶。凄く表現の優しい本でした。 |
| ボッコちゃん 星新一 新潮文庫/ショートショート集 |
願いを何でも叶える悪魔、殺し屋と名乗る優しげな女、どこまでも続く謎の穴…。
そう遠くない世界・遠くない時代を背景に描かれる、SF・サスペンス・ファンタジー。
ブラックユーモア溢れる短い物語の集団、頭にこびり付いて離れません。 |
| アルケミスト 夢を旅した少年 パウロ・コエーリョ 角川文庫/ファンタジー |
羊飼いの少年は、夢で見た"前兆"だけを胸に、彼を待つ宝物を探す遥かな旅に出る。
砂漠を舞台に描かれる、夢と勇気の物語、そしてほろりと含まれる現実感。
短い話ながら、心の置き場・在り方など、何となく心地のいい話でした。 |
| 海の短編集 原田宗典 角川文庫/掌編小説集 |
不思議な魔術師の忠告、魂をしまう箱、立ち入り禁止の絶景ポイント…。
南国の美しい青い海を舞台に描かれる、幻想的で不思議な、時に厳しい物語。
10P前後の短い物語は、もう一話、あと一話と読みたくなる絶妙な長さでした。 |
| ジーキル博士とハイド氏 スティーブンソン 新潮文庫/怪奇小説 |
殺人事件の容疑者・醜悪な小男ハイド。その背後に見えるは、高潔な紳士ジーキル―
人の心に潜み、必ずしも切り離せはしない"善"と"悪"。
陳述書や手記といった形であかされていく事件の全貌、重い世界観と空気が素敵。 |
| クリスマス・キャロル ディケンズ 集英社文庫/ファンタジー |
クリスマス前夜、ケチで意地悪な爺さんの前に現れた、恐ろしい亡霊の目的とは…。
亡霊の見せる過去・現在・未来。不気味さと冒険と、人の心の変化の面白さ。
読者に語りかけるようなコミカルな文章、最後まで楽しく読めました。 |
| 星の王子さま サン=テグジュペリ 岩波書店/ファンタジー |
砂漠に墜落した私が出会ったのは、遠くの星からやってきた、小さな王子様。
温かで甘いメルヘンの中に潜む、物悲しさや重い思想、厳しい現実。
児童書ながら、すごく奥の深い世界です。有名なワケだ…。 |
| どろぼうの神さま コルーネリア・フンケ WAVE出版/ファンタジー |
水の都ベニスに住む、訳ありの子供達。彼らを統べるは"泥棒の神様"―
現実とファンタジーの狭間のような物語は、切なさとドキドキが同居。
児童書ですが、大人にも充分に楽しめる物語だと思います。 |
| 図南の翼 十二国記 小野 不由美 講談社/ファンタジー |
不老の王と麒麟がそれぞれ治める12の国。王が斃れれば、国が傾く―
不安と興奮が渦巻くこの物語は、シリーズの中でもイチオシの作品。
一気に読破したくなる、物語の構成と文章…凄いです。 |
| 死して咲く花、実のある夢 神林 長平 早川書房/SF |
奇妙な作戦中に三人の兵士が迷い込んだ謎の世界は、生死の境さえ不明瞭―
生死の新たな観念を描いた作品は、重いテーマでありながら快活。
非常に等身大で人間らしい登場人物には、つい感情移入してしまいます。 |