| ANSWER ※この話は、微妙に下記一編の続編です。 |
「今日の収穫は、六つ」 鈍色のタグを無造作に鉄の小箱に投げ入れ、青年は青いモニターに目を向けた。 あの世というものが存在するかはさておき、たった今灰色になった名の持ち主達は、すでにこの世にはいない。 モニターを確認するでもなく、青年は部屋に備え付けられた無機質な灰色のガラスケースから、 タグの持ち主のひとりから戴いてきたワインを開け、グラスに注ぐ。 海のように蒼いそのワインは、特殊な工程で作られた、ごく珍しいワインらしい。 涼やかな香。ふいに脳裏に浮かぶ、幼さの残る白い顔。 青年は多くの人に問いかけた。 彼が狙う獲物は皆、絶望と苦悩に満ち、世に倦んでいる。 なんて傲慢な人間達だろうと、内心で冷笑し、青年は彼らの望みを叶えてきた。 首にかけた細い銀の鎖を手繰り寄せ、半年前から持ち歩いているタグを胸元から引っ張り出す。 四角い空から舞い降りた青年の問いに、 「そんな事、望まないよ。 「死んだら、会えなくなるよ。オレが世界を滅ぼせば、彼女と一緒に死ねる」 淡い七色に光るアニマ・タグは、美しい何かを心に抱いた者の、透明な命の証。 「それに、彼女には幸せになってほしいんだ。僕には何も出来ないけれど」 絶望と苦悩に染まっていない命は、青年の"獲物"ではない。だが、惹かれた。欲しかった。 青年が淡い虹色のタグを手に入れて、半年が経った。 だから、明日も青年は世に倦んだ人々に問うのだ。 |
Fin.
11作目囁ピエ、[ANSWER]でした。
判明した"答え"ではなく、未だ見付からない"答え"。
"アニマ(anima)"は霊魂,生命を表すアフリカ人の言葉でしたか。
"タグ"は米軍兵の認識票ドッグ・タグから。まんまですね(笑)
◆初話「壊れていくこの世界で」◆次話「ANSWER」◆最終話「クリア・スカイ」◆